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東京家庭裁判所 昭和50年(家)4243号 審判

申立人 国籍 韓国

住所 東京都

李光順(仮名)

主文

本件申立を却下する。

理由

一  申立人の申立の趣旨・理由は別紙(省略)記載のとおりである。

二  記録によれば、申立人の国籍は韓国であると認められる。韓国人の名の変更の申立について、韓国戸籍法によれば、改名しようとするものは、法院の許可を受けて、その届出をすることができる旨定められているものの如くであるが、右は韓国戸籍上その表示を変更するものであつて、日本国の家庭裁判所が右の事項につき裁判権を有するものではないと解されるから当裁判所はかかる事項の審判をすることはできない。

三  しかし日本国の家庭裁判所が韓国人につき右の改名許可の裁判をする権限はなくとも、我が国におけるその呼称の変更をなしうべきや否やについて、これのみについて肯定的に解する場合の許否について以下に検討する。

申立人は美秀なる名を永年使用したと主張するが、申立人の言うところによれば、それは昭和四六年以降であるというのであるから精々四ヵ年位にすぎず、これを以て永年使用したという場合には当らない。また、申立人の主張によれば、申立人は以前交通事故に遇つたが、右は占いによると名が悪いためで、今後も不運に見舞われるというのである。しかしこれを以て名の変更の合理的理由とはなしえない。申立人の名が男性と間違われるという点も、具体的でなく、首肯できるところとはならない。そうすると我が国における申立人の呼称の変更の正当な理由があるとも認められない。

四  よつて、いずれにしても本件申立は理由がないからこれを却下することとし主文のとおり審判する。

(家事審判官 長利正己)

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